第21回![]()
saorinさんの“自分史”も遂に最終章。初のワークショップでの出逢いが、本の出版につながり、個展開催へ。一つの出来事がこんなにも様々なことに広がっていくなんて…いったい!?
「Photo Imaging Expo(=PIE)」。“アジア最大の写真の祭典”と言われるイベントです。様々な写真・カメラ関係の企業が集結し、自社の商品を展示したり、様々なショーやイベントを行ったりするなど、この業界のほとんどの人が足を運ぶと言っても過言でないくらい、大きなイベントです。(ちなみに、「PIE」という名称のイベントは2009年で終了し、2010年からは新フォトイベント「CP+」という名称で行われるそうです)そのような大きな舞台で、なぜか私が写真雑貨のワークショップ講師をつとめることになったのは、前回もお話したノーリツ鋼機という会社のブース。和歌山に本社がある会社で、写真ラボ機などの処理機器を作っている大手メーカーです。PIEに参加するにあたっての大きなコンセプトは、「もういちど、写真へ。」デジカメとパソコンで、1枚1枚が軽くなってしまった写真を、もういちど見直そう、そんな想いが込められていました。
何回か打ち合わせを重ね、またワークショップの材料をそろえ、試作品を作り・・・そしてブースの壁の一部をお借りして展示もすることになっていたので、PIE本番までの数ヶ月間は本当に怒涛の日々でした。数人を前にしてのワークショップには慣れてはいたものの、マイクを使っての大人数でのレクチャーは初めて。(しかも、1回15人×全4回=計60人分の材料!そろえるだけでも一苦労・・・)そして、ただ雑貨作りをするだけでなく、少しトークもする予定になっていたので、ノートに自分が伝えたいポイントを書き出し、うまく話がつながるように流れを作り、何度も練習しました。
ワークショップの様子。昔から本番に強く、度胸だけはあった私(笑)。特に大きな失敗もなく、何とかやり終えました。
PIEのワークショップで作った雑貨はこちら。カード用のリングを使った、アルバムでした。
ブース内の壁をお借りして、写真雑貨の展示も行いました。
PCのモニター上で見て満足するだけでなく、写真を本来の写真という形で残す。ノーリツ鋼機は、写真雑貨のことを“フォトクラフト”と呼んでいました。写真で何かを作る、ということも、ノーリツ鋼機のコンセプト「もういちど、写真へ。」につながっていたのだと思います。
PIEは、全部で4日間。私はそのうちの2日間、1日2回ワークショップを行いました。あれは1日目、その日のワークショップが終了し、ほっとしている時だったと思います。ある女性と男性の二人組に声をかけられました。女性はフリーのライター、男性はカメラマンで、今ちょうど、自分たちが関わっている出版社が女性向けの写真系の本を企画しているので、ぜひ協力してくれないかという話でした。それが、私がこれまで著書を2冊出版した、雷鳥社とつながるきっかけでした。思えば、そのお二人がたまたまPIEに来ていたその日、雷鳥社と接点ができたまさにその日が、私のワークショップ出演日だったという事実にも、何かしら運命めいたものを感じます。もしこれが別の日だったら、著書「写真でつくる雑貨」は生まれていなかったのですから・・・いやー、手前味噌ですが、私が一番誇れるものって、実は運なのかもしれません(笑)。
そしてその後どうなったかというと・・・めでたく、初の自著本、「写真でつくる雑貨」を2008年の4月に出版することとなりました。きっかけとなったPIE 2007から、ちょうど1年後のことです。
PIE直後に最初の打ち合わせをしましたが、もちろんすぐに企画が通るわけではありません。当初、声をかけてくださったライターさんとカメラマンさん、そして雷鳥社側とでは、“写真絵本”のような感じのざっくりしたイメージしかなく、まだ青写真の段階でした。そこからの私は、かなりアグレッシブ! 私のメインの作品、豆本写真集以外にも、さまざまな作品を持参してアピールしました。といってもまだその時点では、自分もぜひその本に関わりたい!! という気持ちがあっただけで、まさか自分が本の著者になるとは思ってもみませんでした。(ほんとです。もともと本の一部の協力、という話だったので)ですが、話が進むにつれておそるおそる確認してみたら、何と私が著者になるらしいという事実を知り、内心驚愕、同時に小躍り(笑)。そして企画が通り、出版が決定したと連絡を受けたときの、あの飛び上がるほどうれしい気持ち。今でもはっきり覚えています。自分がしてきたことが、一つの形になる。豆本などの自己満足で終わるものではなく、本という形で、世に出版されるなんて! 本当に夢のようでした。いえ、それ以上に、以前からこれこれこんな写真の本を作ってみたいなあ、なんて夢見ていた私は、内容は違えどすぐに叶ってしまったその事実に、少々びびり気味でした(笑)。
3月に行われたPIEから、約1年間。ひたすら「写真でつくる雑貨」の本づくりに没頭しました。しかし、本1冊作ることが、こんなにしんどいとは・・・。まあ、作品制作だけでなく、原稿執筆から撮影、しかもイラストまで、全てこなしたのですから(欲張りにもほどがありますね(笑))当然といえば当然。自業自得なんですけどね・・・。途中、本当に何度も投げ出したくなりました。やってもやっても終わらなーい!!そんな気分さえしたものです。この、ゴール目指してひたすらがんばる感じ(あと、終わった後の解放感も)、ちょっと受験勉強に似ていたような気がします。
作品制作→撮影→原稿執筆・イラスト→デザイン→テスト刷り→校正(文字・色・デザイン)→印刷・製本・・・1冊の本ができあがるまでに、これだけの行程がありました。ゴールまで本当に長い道のりでしたが、2008年の4月、無事出版となりました。表紙は、かねてからの私の希望で、ポジフィルムっぽく作った写真雑貨に、ハサミなどの文房具をスキャンしたものをコラージュしてもらいました。“フィルムにハサミを入れる”コラージュで、写真に手を加えて何かをつくる、ということを表現したかったのです。
これが「写真でつくる雑貨」の実際の表紙デザイン。
これらは、私がサンプルで作った表紙のデザインコラージュ案。左は、反転させるとだいぶ実際のデザインに近いですが、右のような整然としたレイアウト案もありました。皆さんはどちらが好みでしょうか?
本の出版と同時に、初の個展「写真と雑貨と古いもの」を行いました。会場は神保町にあるかわいい雑貨屋さん、AMULETです。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、この初の個展で作った古道具写真雑貨が、いくつか新著「写真と古道具のくらし」で登場しています。そこまで意識はしていなかったのですが、このとき既に次回作のイメージが漠然と出来ていたのかもしれません。
メインの壁。個展タイトルの「写真と雑貨と古いもの」を英語にした、「Photo, Zakka, Antique・・・」を、大きなエンピツで壁に書いているようなディスプレイがポイント。
出版日が押してしまい、個展の2日目にようやく届いた本たち(笑)。
こうして初個展の写真を見返していると、まさに今、2回目の個展「写真と古道具のくらし」展の真最中なだけに、改めて「ああ、最初ってこういう展示だったんだ・・・」と感慨深く思い出しました。
2008年4月に無事「写真でつくる雑貨」を出版してから、雑誌などのさまざまなメディアで紹介していただきました。特に本を出した昨年は色々なお仕事に恵まれ、本当にたくさんの写真雑貨を作りました。著書「写真でつくる雑貨」は、そのとき私が考えうる全てのアイディアを詰め込んだ本。さらに仕事で依頼を受けた以上は、本以上のユニークでかわいいもの、そして斬新なものを作らなければ・・・頭の中はいつもそのことでいっぱいでした。そうして走り続けてある日ふと、あれ? と立ち止まりました。私の中で、何かが変わりつつあったのです。なぜか、何を作っても良いと思わない。本を見てくださった方から、激励のメールやお手紙をいただくことも時折あったのですが、うれしいと思う反面、何となく自分の中で違和感を覚えるようになりました。なぜなのか、しばらく自問自答して気づいたのは、「写真は、写真としての姿のままが一番美しい」ということでした。
私が今やっていることを、全てひっくり返すような発言かもしれません。けれども、写真をさまざまな形にしてきたからこそ、言えることでもあります。つまり、私は“写真を雑貨というスタイルに変える”ということだけにとらわれすぎていて、写真という本来の姿を見失っていました。もともと写真が好きで、それが高じて今の仕事につながっていますが、本を出版し、“写真を雑貨にする人”という作家のような存在にいつのまにかなっていたことで、写真を素材として見てしまっていた自分に気づきました。もちろん、考え方は人それぞれなので、写真=100%素材と考えている方はそれでいいと思います。けれども私は、まず写真家、フォトグラファーでありたい。だから私にとって写真は素材ではなく、あくまで写真でなくてはならないのに・・・。それに気づいたとたん、今まで作った写真雑貨が、全て色あせて見えました。色々悩み始めたのもこの頃で、ちょうど本が出てから半年くらいは、ずっともやもやした思いを抱えつつ仕事をこなしていた気がします。
周りに相談したり、自分に問いかけたり・・・そして、一つの結論にたどり着きました。自分への戒めといっても良いかもしれません。それは、まず作品としての写真をちゃんと撮ること。そして撮ること自体を続けていくこと。そして何か形にするにしても、写真そのものが一番美しく見える、写真ありきの作品を作るということ。また、今までそうしてきたように、ハードルを設定するときは、そのときの自分よりちょっと高めにすること。あと、なるべく「~したい」と言わないで、「~する」と自分の中で宣言するようにすること。というのも、私自身思ったのですが、「~したい」と言っているだけでは、絶対実現は不可能だなと・・・。妥協せずに写真と向き合いながら、作品を作る。そして雑貨作りにとどまらず、写真と関わっていく。それが、これからの私にできることだと思っています。
はー、何だかものすごく長くなってしまいました。最後の方なんてちょっとえらそうに書いてしまいましたが・・・いかがだったでしょうか。これで、saorinの自分史は終わりです。途中かなり省略している部分もありますが、(実は、PIEの前にデザインフェスタなどのイベントに何回か参加しているのです)さすがに10回も20回も自分史を書いているわけにはいかないので(笑)、いつか振り返る機会があったら、そのときまた書きたいなと思います。正直この自分史は、今まで自分がたどってきた道を、私自身振り返ってみたい、そんな欲求から書き始めたものなのですが、思わぬところで反響があり、びっくりすると同時に、とてもうれしく思いました。最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
2009年の「写真を楽しむ、写真で楽しむ」のコラムは今回で終了し、来年1月からはまた通常のコラムに戻ります。今開催中の個展の様子や、10月に行ってきたフランス・沖縄の写真など、ネタは盛りだくさん。また来年も、隔月でどうぞよろしくお願いしますね。それから、12月5日(土)から3日間、大阪での個展もよろしくお願いします!関西の皆さま、お会いできるのを楽しみにしています。
それでは、一足も二足も早いですが(笑)、皆さまよいお年をお過ごしください。
saorinサイト green freak
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さて、今回は自分史の最終回となります。えー、どこまで書いたかちょっと忘れかけていますが・・・(笑)今年最後の写真花コラム「写真を楽しむ、写真で楽しむ」。今回はかなり文字が多い&長いですが、最後までお付き合いくださいね。